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【実録】年末調整ツールで直面した「iPhoneの壁」と、情シスと乗り越えた社内DXの学び

takabon

年末調整の時期になると、毎年社員から数多く寄せられる質問があります。

「年収◯◯万円だと、所得はいくらって書けばいいんですか?」

手引きや記入例を配っていても、年末調整は一般の社員にとっては複雑な手続きのようで、私の手元の内線も鳴り止みません。

「それなら、収入を入れるだけで所得を自動計算してくれるシンプルなツールを作って配ればいいのでは?」

そう思い立ち、AIの力を借りながらサクッと計算ツールを作成しました。ここまでは順調そのもの。しかし、結果的には社内の端末環境のギャップと、例の「リンゴ印の端末」の洗礼を受けて頭を抱えることになるのでした。

1. 「営業はiPhone、事務は制限端末」という制約の中で選んだ一手

ツールを全社員に配るにあたり、社内のIT環境には大きな「壁」がありました。

  • 営業メンバー: 外回りが多く、持っているのは「会社支給のiPhone」のみ。
  • 事務メンバー: デスクで作業しているが、セキュリティの都合上インターネット接続が厳しく制限された業務端末を使っている。

営業メンバーのiPhoneからは、会社の共有フォルダにアクセスすることはできません。外部のWebサイトやクラウドサービスを案内しても、事務メンバーの端末からはアクセスできません。

「どうすれば、この両方に最も効率よくツールを届けられるか?」

頭をひねった結果、たどり着いたのが「LINE WORKS(グループウェア)の添付ファイルとして配る」という方法でした。

全社員が共通で使っているLINE WORKSなら、ネットが制限された事務のPCでもつながるし、営業のスマホにも直接届く。 そこで、外部通信を一切行わず、ブラウザさえあれば単体で計算が完結する「完全オフラインのHTML/JavaScriptファイル」を作成し、トーク画面にポンと添付してダウンロードしてもらう作戦に出ました。

もちろん、ぶっつけ本番で配ったわけではありません。 事務用のPCはもちろん、自分自身のAndroidスマホでもLINE WORKS経由でファイルを落とし、ブラウザでサクサク計算が動くことを入念に実機テストしました。

「PCでも動いた。スマホ(Android)でもバッチリ動いた。これで全員の手元に一発で届けられる!」

二重のテストをクリアし、満を持して全社へ一斉配布しました。

2. 立ちはだかった「iPhone(iOS)」の罠

ところが、配布直後から営業メンバーから次々と困惑の声が寄せられました。

「画面は開くんですけど、計算ボタンを押しても全く反応しません……」

PCでも、手元のAndroidスマホでも完璧に動いていたものが、なぜ営業のiPhoneだけ動かないのか。調べてみると、iOS特有のファイル管理とアプリ仕様が原因でした。

  • アプリ内ビューア(クイックルック)の罠 Androidならダウンロード後に標準ブラウザが立ち上がってスクリプトを実行してくれますが、iPhoneでHTMLファイルを開くと、通常のSafariではなくアプリ内プレビュー画面(クイックルック)で開いてしまう。このプレビュー画面では、安全確保のためJavaScriptなどの動的スクリプトが強制停止される。
  • ローカルファイル(file://)への厳しい実行制限 共有メニューからSafariに渡そうとしても、メニュー内にSafariが表示されない。別のうまい方法があるのかもしれないが、老若男女入り乱れる全社員が等しく実行可能な方法が見つからない。

「スマホ実機でも試したから大丈夫」という油断を突くように、OSごとの設計思想の違いに完全に足をすくわれました。

3. 「iPhoneユーザーのためだけに」急遽 https:// を用意

「ファイルを長押しして、共有から別のアプリを選んで……」などという手順書を配っても、現場が混乱して問い合わせが増えるのは目に見えています。

添付ファイルをポンと投げて「完了!」のはずが、まさかのインフラ整備に取り掛かるハメに。

ファイルを直配りするのを諦め、社内ネットワーク内からしかアクセスできないクローズドなWebサーバーを立て、きちんと https://(SSL対応)で通る環境を用意することになりました。

4. システム担当者を巻き込んだら、最高の学びに化けた

最初こそ「なんでiPhoneだけ動かないんだ……」と一人で頭を抱えていましたが、悩んでいても始まらないため、社内のシステム担当者(情シス)に相談を持ちかけました。

「社員の年末調整を楽にしたいけれど、iPhoneの仕様で詰まっていて……」

事情を伝えると、情シス側も「現場の負担を減らすためなら」と快く応じてくれ、セキュリティポリシーを守りつつ社内イントラ内に安全な https:// のWebスペースを一緒に整備してくれました。

一人で抱え込んでいたら、何も解決しないまま終わっていたかもしれませんが、専門家の視点が入ったことで多くの収穫がありました。

  • セキュリティと現場の利便性をどう両立させるかというバランス感覚
  • なぜiOSがローカルファイルの実行をここまで厳しく制限しているのかという背景
  • 「現場の業務効率化(DX)」は、管理部門とシステム部門が連携した瞬間から一気に加速するということ

URLを発行してLINE WORKSで周知したところ、あれだけ頑なに動かなかったiPhoneのSafariが、嘘のようにスルスルと計算をスタート。営業も事務も、全社員が安全かつ快適に使える仕組みが無事に完成しました。

5. 次回から絶対に見落とさない!事前に押さえるべき「5つのチェックポイント」

今回は走りながらの解決となりましたが、ツール作成を手伝ってくれたAI(Gemini)と今回のプロセスを振り返り、次回以降の社内ツール配布や業務改善にそのまま活かせる「本来事前に押さえておくべきだったチェックポイント」を5つの視点で整理しました。

① 配布方法と実行環境の確認(ファイル配布 vs Webリンク)

プログラム(JavaScript等)を含むツールは、チャットやメールで「ファイル添付」して配ると、アプリ内ビューア(QuickLook等)の制限で動かなくなるリスクがあります。動作を保証するためには、最初から社内Webサーバーやポータルに配置し、「URLリンク(https://〜)」としてアクセスさせる設計にしておくべきでした。

② 利用者の端末環境・アプリの仕様把握(実機テスト)

PCや手元のAndroid端末で動いても、「社用iPhone」かつ「LINE WORKS等のグループウェア経由」という現場特有の環境下では、OSやアプリのセキュリティ制約で挙動が全く異なります。配布前に、自分の端末だけでなく会社支給のiPhone実機でも、受信から入力・計算までの一連の流れをテストしておくべきでした。

③ システム・情シス部門への事前相談・連携

「社内でこういうツールを配りたい」「閉域網・セキュリティ要件はどうクリアすべきか」を初期段階で情シス担当者に相談しておくこと。事前に繋いでおけば、適切な置き場(社内サーバー等)の用意や、プレビュー制限の回避策を最初から選定できました。

④ ユーザー(社員)の入力の癖とバリエーションの想定

「120万」を「120」と打つ人、カンマ(,)を手入力する人、全角で打つ人など、利用者のリテラシーや入力習慣は多様です。「どう打たれてもエラーを出さず自動解釈するか」「入力方法の注意書きを添えるか」といった、ユーザー目線の親切な設計が必要でした。

⑤ 税制・申告の最新ルールの正確な把握

AI任せでコードを作ると、学習データやプロンプトの指定漏れにより「過去の税制・申告ルール」のまま出力してしまうリスクがあります。最新の法改正や書式が反映されているか、複数の入力パターンで入念にテスト・検収を行うことが不可欠でした。

まとめ:AI時代だからこそ「テストの勘どころ」と「頼れる関係性」が武器になる

AIが実用的なコードやアプリをほぼ自動で組み上げてくれる時代になりました。非エンジニアでも「自前で現場の困りごとを解決できる」という大きな武器を手に入れたのは間違いありません。

しかし、AIがどれだけ完璧なコードを書いてくれても、「現場の誰が、どんな端末で、どの経路で開くのか」という泥臭いテストの勘どころは、情シス出身ではない素人だと、ついつい見落としがちで、つまずきやすい落とし穴です。

「PCでも手元のスマホでも動いたからOK」と過信せず、分からないインフラやセキュリティの壁にぶつかったら素直にプロを頼る。社内の情シスやシステム担当者と日頃から気軽に相談できる関係性を作っておくことこそが、ツールを本当に「現場で使える仕組み」にするための最大の鍵だと実感しました。

ちょっとした難産になりましたが、現場の混乱を防げただけでなく、他部署との連携が深まり、自分自身の業務改善スキルも一段階レベルアップする実り多き経験となりました。同じように社内ツールの内製化に挑む方の、転ばぬ先の杖になれば幸いです。

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タカボン
タカボン
50代、現場叩き上げのビジネスパーソン。急速に進化する生成AIの波に乗り遅れまいと、AIを相棒にして日々の業務効率化や生活のアップデートに挑戦しています。当ブログ「AIことはじめ」では、AIを「難しい先端技術」としてではなく、「頼れるデジタルな部下・相談相手」として使いこなすための実践記録を発信しています。
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